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野原 壯; 宇野 正起*; 土屋 範芳*
Geofluids, 2019, p.6053815_1 - 6053815_16, 2019/08
被引用回数:3 パーセンタイル:29.67(Geochemistry & Geophysics)この地質学的研究は、地熱活動の痕跡を評価するために、花崗岩の電子プローブマイクロアナライザ解析を利用している。角閃石-長石温度計を適用し、ガラス状脈の温度は約700Cと推定された。ボーリング岩石コアの肉眼および顕微鏡の観察の結果は、角閃石および斜長石によるマイクロフラクチャーの充填が、超臨界流体の流れの軌跡であることを明らかにした。粒界マイクロフラクチャーおよび平行マイクロフラクチャーは、白亜紀後期における花崗岩体の定置直後に起こったと考えられる超臨界流体の限られた活動によって形成された痕跡と認識された。現在の高い透水性は、超臨界流体に関連したマイクロフラクチャーネットワークと関係すると考えられた。超臨界流体による割れ目の痕跡は、深さ1200mの坑井を用いて簡易的に把握された。各試験区間の透水性と割れ目の特徴とに基づいて代表的なタイプが提案された。緑泥石充填の割れ目タイプは、相対的に小さい割れ目分布密度を示したにも関わらず、高い透水性に対応した。この研究の結果は、透水性の向上は、花崗岩を流れた超臨界流体によって活性化されたことを示した。
宮川 和也; 奥村 文章*
Geofluids, 2018, p.2436814_1 - 2436814_11, 2018/10
被引用回数:4 パーセンタイル:31.76(Geochemistry & Geophysics)地下深部の炭化水素ガスの濃度組成や同位体組成を調べる事により、炭化水素ガスの起源や長期的な流体移動に関する知見が得られる。地上からのボーリング孔を用いてガス採取を行う場合によく用いられる方法として、ボーリングのカッティングスあるいはコアに吸着したガスをサンプル容器のヘッドスペースに追い出して分析する方法がある。しかしながら、この方法により得られた結果は、しばしば大きなばらつきを示す。本研究では、上述の手法により採取・分析した結果を、地下施設を利用して得られた結果と比較し、ばらつきの原因が試料の採取・保管方法に起因することを明らかにし、正しい値を得るための要点を指摘した。
中田 弘太郎*; 長谷川 琢磨*; 大山 隆弘*; 石井 英一; 宮川 和也; 笹本 広
Geofluids, 2018, p.7823195_1 - 7823195_21, 2018/01
被引用回数:9 パーセンタイル:56.77(Geochemistry & Geophysics)高レベル放射性廃棄物地層処分の安全評価におけるシナリオの一つとして、地下水シナリオがある。地下水シナリオに基づく安全評価において、長期間にわたり地下水の移動が遅いことは重要な要因である。本研究では、透水性の低い堆積岩地域の一例として、北海道幌延地域に分布する新第三系の海成堆積岩である声問層と稚内層中の地下水の安定性について、塩素やヘリウムの同位体及び水の安定同位体を用いて調査・考察を行なった。その結果、稚内層の深部地下水は、約100万年前から始まった地層の隆起後も、天水の影響を受けることなく、安定に存在している可能性が示された。一方、声問層や稚内層浅部の地下水は、地層の隆起後、天水の影響を受けており、このことは地下水年代測定の結果からも支持された。本地域の様に、地層の圧密・続成作用を受けた厚い堆積層では、間隙水・結晶水の放出等の影響を受け、地下水の絶対年代を正確に推定することは難しい。しかし、本研究において検討した地下水年代測定の結果と地史との比較は、地下水の流動性に関わる概略的な評価(長期にわたる地下水の安定性の有無)を行う上で有効な手段であると考えられる。
丹羽 正和; 水落 幸広*; 棚瀬 充史*
Geofluids, 15(3), p.387 - 409, 2015/08
被引用回数:11 パーセンタイル:50.4(Geochemistry & Geophysics)断層破砕帯における水-岩石反応に伴う化学組成変化について明らかにするため、本研究では、中部日本の阿寺断層の破砕帯露頭を対象に、断層岩の化学組成分析を行った。粘土鉱物や炭酸塩鉱物の安定同位体組成分析からは、破砕帯の断層ガウジが地表付近で形成されたことを示し、変形構造解析に基づく破砕帯の発達過程と整合的である。全岩化学組成分析の結果、本研究では、粘土鉱物の形成に伴うSi, Na, Kや軽希土類元素の減少、断層活動によって混入してきた玄武岩岩片の変質に伴う炭酸塩鉱物の沈殿、その炭酸塩鉱物との錯体形成に伴う重希土類元素の濃集を確認することができた。
吉田 英一*; Metcalfe, R.*; 石橋 正祐紀; 南 雅代*
Geofluids, 13(1), p.45 - 55, 2013/02
被引用回数:14 パーセンタイル:55.15(Geochemistry & Geophysics)高レベル放射性廃棄物の地層処分などの地下施設を建設するうえでは、地下水や物質の移動場の長期的な変遷を評価するために、岩盤中の割れ目ネットワーク構造を理解する必要がある。しかし、変動帯に位置する結晶質岩中における透水性割れ目の長期的な変化や定常性については、理解されていない。これらを明らかにするために、日本に分布する異なる時代に形成された岩体を対象に検討を行った。また、割れ目の形成から充填の過程を明らかにするために、瑞浪超深地層研究所の深度300mで取得したサンプルを用いて、割れ目の幾何学的特徴の整理及び地球化学的検討を行った。形成年代の異なる岩体を対象とした検討の結果、割れ目の形成・充填は、(1)岩体の温度低下に伴う引張割れ目の形成、(2)比較的早い岩体上昇中に発生する熱水循環による割れ目の充填、(3)低温の地下水の循環による割れ目の充填の過程を経ることが考えられた。また、割れ目充填鉱物としての炭酸塩鉱物の炭素同位体組成は、沈殿した地下水の水質ごとに異なり、炭酸塩鉱物沈殿時の地下環境を示している。これらに着目することで、割れ目の形成及び充填に関する詳細なモデルの構築が可能であると考えられる。